『うわーん!お母さんが~~……!』
車内には様々な悲痛の声が飛び交っていて、みんな必死で助けを求めているのが分かる。
私も……生きて帰りたい。
そう思っていると、防火衣を着た人たちが続々とこちらにやって来て、瓦礫の下敷きになっている人を助けようとしているのが目に入ってきた。
私はその人たちが消防士なのだとすぐに分かった。
『もう大丈夫ですよ、今助けますから』
混乱している人たちを落ち着かせるかのように励ましの声を掛けながら人々を助けていく。
ああ……彼もいつもこんなふうに人の命を救っているんだろう。自分の命を懸けてまで。
私の好きな人はどこまでもカッコいい人だ。
そんな中、私がここにいることは未だ気付かれずにいた。
消防士さんから私のいる位置は視覚になっているからわからないのも当然だ。
私も、私も生きて帰らなきゃ。
まだ、彼に伝えていない言葉があるから。
『だ、誰か助けて……っ!』
そう必死に声を上げて叫んでも、誰の耳にも届いていないのかこちらを気にする様子はない。
どうしよう……誰か、気づいて……!
『誰か……!お願い……!助けてっ!』
いつの間にか透明な雫がはらりと頬を伝っていた。