『幸せになれよ……陽音』
もう二度と彼が愛おしいその声で、大好きな優しい声色で、私の名を呼ぶ声を聴くことができない。
笑った顔、怒った顔、困った顔、悲しそうな顔、全部、全部が未だに脳裏に焼き付いてどうやったって彼のことを忘れられない。いや、忘れたくないんだ。
『いや……っ!!!ねぇ、お願い……!!やだ……っ』
あの日、繋いでいた手を離さなければきっと今も彼と一緒にどこかで笑い合えていたはずなのに。
どうして、私は彼の手を離してしまったんだろう。
今でも大好きな彼の体温が消えずに手のひらにずっと残ったままで、手のひらをぎゅっと握ると彼と触れ合えているような感じがして、とても心が温かくなると同時に二度と還ってこない彼を想って胸が張り裂けそうなほどズキズキと痛み、どうしようもなく切なくなる。
生きているのが、呼吸をするのが、苦しくて仕方ない。
どうして私は生きているんだろう。
どうしてあの時助けなんか求めたんだろう。
こんな苦しい思いをするくらいなら、いっそう消えていなくなりたい。
私はあの日からもう誰にも『助けて』なんて言わないと決めたんだ。
誰もいらない、そう心に決めた。
そんな時だった。