「あ、みきちゃーん!!」

レジに立つみきちゃんを見つけ、大きく手を振る。みきちゃんも気づいたみたいで小さく手を振ってくれた。

私は桜チョコのエクレアとパックのコーヒー牛乳をとり、みきちゃんのレジに行く。

「もうちょっとで交代だからちょっと待っててね」

そう言われて私は支払いを済ませると店の外に出た。ほどなくするとみきちゃんがきて私たちはロビーに向かった。

「ねね、私みきちゃんに聞きたいことがあるんだけど....」

席に着くや否や私はみきちゃんにそう尋ねた。

「なぁに?なんでも聞いて」

「あのさ、立花颯くんっていう患者さん知ってる?」

みきちゃんは売店の店員としてだいぶ前から働いているし、
とても話しやすい人柄だからほとんどの患者さんとは知り合いだ。
だから長期入院している患者さんはほぼ顔見知りだし、売店に来れない患者さんでも家族の人と知り合いの可能性がある。
私はいつから立花くんがいて、なんの病気なのか知りたかった。

「たちばな...立花....」

みきちゃんはそう呟きながら考えると、あっと小さく声を漏らした。

「私は会ったことないんだけどね、昨日売店に来てくれた患者さんが、誰も入ってなかった個室に人が来たみたいだって言ってたなぁ。それが確か立花さんだったと思うわ」

「誰も入ってなかった個室ってあの北側にある日の当たらないとこのことだよね。あそこの部屋にするなんて珍しい」

昔、あそこには珍しい皮膚の病気の人がいたらしい。その人が亡くなってからあそこは日も当たらないこともあり、あの部屋に入りたいという人がいなかったから、ずっと空き部屋のままだった。

私の病室とは真反対のとこだな。今度木の下で会ったら直接、立花くんに色々質問してみよう。

もぐもぐと口を動かしながら私はそう思った。