桜の木の下に行くと私と同じくらいの青年が立っていた。この桜の木に来る人はなかなかいなくて、いつも私1人だったから珍しいなと思っているとその青年が振り向いてこっちをみた。
「君も桜を見に来たの?」
青年は左目のあたりと腕を包帯で覆っている。その痛々しさとは裏腹に、青年の顔には優しい微笑みが浮かんでいた。
「うん、私、この桜の木が好きで....」
何かしらの怪我や病気で入院しているはずなのに包帯以外にはそれを感じさせない青年に引き込まれるような感覚がした。
まるで、桜の妖精みたいな人だな。
ふと、そんなふうに感じた。
「桜の木っていいよね。華やかさを兼ね備えながらどこか寂しい感じもある。僕も桜の木が好きなんだ」
にこっと笑いながらまた目を桜の木に戻す青年を見て、この人のことをもっと知りたいと思った。
「ねぇ、名前なんて言うの?」
気がついたらそう口にしていた。しかし、すぐに自分が名乗っていないことに気がつき慌てて名前を言う。
「私は篠崎四葉って言うんだ」
その青年はふわりと笑いながら
「僕は立花颯。よろしくね、篠崎さん」
「こちらこそよろしくね。立花くん。」
この出会いから始まった小さな桜の鑑賞会が私の長い入院生活に彩りをもたらしてくれた唯一の出来事だった。
「君も桜を見に来たの?」
青年は左目のあたりと腕を包帯で覆っている。その痛々しさとは裏腹に、青年の顔には優しい微笑みが浮かんでいた。
「うん、私、この桜の木が好きで....」
何かしらの怪我や病気で入院しているはずなのに包帯以外にはそれを感じさせない青年に引き込まれるような感覚がした。
まるで、桜の妖精みたいな人だな。
ふと、そんなふうに感じた。
「桜の木っていいよね。華やかさを兼ね備えながらどこか寂しい感じもある。僕も桜の木が好きなんだ」
にこっと笑いながらまた目を桜の木に戻す青年を見て、この人のことをもっと知りたいと思った。
「ねぇ、名前なんて言うの?」
気がついたらそう口にしていた。しかし、すぐに自分が名乗っていないことに気がつき慌てて名前を言う。
「私は篠崎四葉って言うんだ」
その青年はふわりと笑いながら
「僕は立花颯。よろしくね、篠崎さん」
「こちらこそよろしくね。立花くん。」
この出会いから始まった小さな桜の鑑賞会が私の長い入院生活に彩りをもたらしてくれた唯一の出来事だった。