次の日、お母さんが病室にきた。

「着替えはいつものとこに入れておくからね。それ以外の物はここにまとめておくから。それじゃあ、お母さんは先生のとこに行ってくるね、それじゃあまたね」

「うん...」

スーツを着ているお母さんは、やっぱりこれから仕事のようだ。

きっと次の病状説明日まではお見舞いにも来てくれないってことだよね。

それがいつものことなのに今日はとても寂しいと感じて思わず、

「あ、お母さん！」

と呼びかけてしまった。なに？とお母さんと振り返る。

「あ、えと.....、お仕事、頑張ってね」

ありがとう、と微笑んでお母さんは病室を後にする。

結局寂しいって言えなかったな。

届かなかった寂しさを抱えながら桜の木に目を向ける。今日はなかなか気分が晴れなかった。

桜の木の下に行こうかな。

病室から眺めるだけで気分が晴れない時は、桜の木の下に行くと元気になれる。私は桜色のカーディガンを羽織り、桜の木へと向かった。