「うーん!やっぱ桜もちサイコー!」

さっき売店で買った桜もちと緑茶をみきちゃんと一緒に食べる。一週間に一回しかない甘味補充の時間は長い長い入院生活のオアシスだ。
桜もちを食べた後はみきちゃんとの談笑タイムになる。
お見舞いに来てくれるような友達のいない私にはみきちゃんが唯一の話し相手で、いつも色んな話をする。いつものようにみきちゃんの子供の話を聞いていると、みきちゃんが

「そういえば、お母さんはお見舞いに来てくれた?」

と聞いた。

「....んーん。来てくれてないよ。仕事だもん」

私はなんでもないことのように言った。そっか、と悲しそうにみきちゃんは目を伏せる。
私の両親は私の病気のことで離婚した。
それからお母さんに引き取られ、お父さんとはそれきり会っていない。
お母さんは私の治療費を稼ぐために朝から晩まで働いていて、小学五年生になったあたりからお見舞いに来なくなった。
二週間に一回の病状説明は来てくれるけど、着替えなどの生活用品を置いてすぐ帰ってしまう。

せめて病状説明の日くらいは話せたらいいのに。

そう思うと少し寂しくなり俯いてしまう。
心配そうにみきちゃんが覗き込むのに気がついて私は慌てて、とびきりの笑顔になる。

「でも大丈夫!だってみきちゃんがいるもん!いっぱい話してくれてありがとう♪」

ぎゅーっとみきちゃんに抱きつくと、みきちゃんは嬉しそうに

「ふふ、そう?私も四葉ちゃんと話せてとっても楽しいわぁ!」

と頭を撫でてくれる。
私にとって今はお母さんよりもみきちゃんの方が母親と感じている。またね、とみきちゃんと別れて病室に戻る。
みきちゃんには言っていないけれど、明日が今月の病状説明日だ。

少しでもお母さんと話せたらいいけど。

そう思いながら外に見える桜の木を見つめた。