次の日、いつもの時間にお母さんが来た。やっぱりスーツを着ていてこれから仕事のようだ。

「着替えとかはいつものところに置いておくわね。それじゃあ先生のところにいって説明を聞いてから帰るわ。安静にしているのよ？」

そう言ってお母さんは病室を出て行こうとする。少しだけでも話したいと思っていたのに言葉が出てこない。ガラガラとドアの開く音がした時

「あ....お母さん！！」

お母さんと少しでも長く一緒にいたい、もっとたくさんおしゃべりしたい！

そんな思いが頭の中を駆け巡る。会話のタネがあるわけでもないのに呼びかけてしまい、お母さんが振り向いてもずっと黙ったままになってしまった。そんな私をみてお母さんは

「はぁ....用がないならもう行くわね。仕事で忙しいんだから」

と言って出て行こうとしてしまう。

私はなにを期待していたんだろう。
お母さんの仕事が忙しいのはわかっていたことなのに。
私のお見舞いよりも休みの日はゆっくり寝て疲れを癒したほうがお母さんのためだし、説明の日もわざわざ仕事前に来てくれているのに。
でも、私は....

「寂しい....」

思わずそう口にしてしまった。