「どうして花を買おうと思ったの?」
「颯斗さんに喜んでもらいたかったからです」
「それだけの理由で?」
「それだけって……。サヤにとって颯斗さんの笑顔は格別です」
颯斗は沙耶香との価値観の違いに頭を抱える。
「サヤ、俺の笑顔の為のプレゼントなら要らないよ。無駄遣いになる」
「無駄じゃないです……。昨晩、颯斗さんがチョコレートをくれて元気づけてくれた時のように、サヤも元気づけてあげたいから」
颯斗に喜んでもらいたい沙耶香と、
お金の使い道について頭を悩ませる颯斗。
二人の思いは交錯していたが、颯斗には沙耶香の気持ちもちゃんと伝わっている。
「わかった。プレゼントは有り難く受け取るね」
「颯斗さん……」
「ただ、受け取るのは今日限りだよ。俺はサヤに金を借りてる立場だからこれ以上何かを受け取れない。だから、次は何か目標を持って貯める事を考えようね」
お金の価値観は人それぞれで、特に彼女とは対照的だ。
使う楽しさと、貯める喜び。
可能であれば、ここにいる間は両方の気分を味わって欲しい。
これから一緒に生活していく中で何か目標を持って一ヶ月間を過ごせたら、心のプレゼントが出来るんじゃないかと思った。
「はい!」
「じゃあ、サヤが欲しいものを言ってごらん」
「宮古島に別荘が欲しいです」
「ははっ、一ヶ月間バイト代を貯めても家は買えないかな……」
金銭感覚が真逆の二人は、銭湯に行くまでの短い時間でお金の使い道について話し合った。