エレベーターの中の二人組は、それぞれ颯斗と沙耶香の手を取ってエレベーター内に引き寄せると交代に外へ出た。
颯斗は予想外の展開に戸惑いを見せる。
「えっ……」
二人の目の前で閉ざされていく扉。
そして、エレベーターに追っ手が乗って来ないように扉の前で盾になる男達。
まるで、追われている立場の颯斗達を庇っているかのように…。
ガシャンと扉が閉まった後は、僅かなモーター音に包まれて上階へ。
想定外の事態に思わず沙耶香と顔を見合わせた。
「さっきの人達、もしかして俺達を庇ったの?」
「サヤも同じ事を思いました。一体どなただったのでしょうか…」
二人は信じられない気持ちに包まれながらも、既にボタンが押されていた五階へと到着。
颯斗は沙耶香の手を握りしめたままエレベーターを降りて右側に走ると、扉が開かれているリネン室の中に飛び込んで扉を閉めた。
颯斗はハァハァと息を切らしながら扉を押さえていると、沙耶香は床にぺしゃんとしゃがみ込む。
瞼を伏せた暗い表情に、颯斗は心配の目を向けた。
「……もしかして、後悔してる?」
自然と口から漏れてしまうくらい彼女の表情は浮かない。
すると、サヤは首を左右に振った。
「後悔はしてません。……ただ、今後会社や家族はどうなってしまうのかと思って」
サヤが心配してる事は俺も心配に思っている。
でも、今回の件は謝罪で済むような話じゃないし、引き返す気もない。
結婚式をぶち壊しに行った時点で、もう後戻りは出来なくなっているのだから……。