家族は『魔力量があるからこの結婚は覆らない』として、心配していない様子だった。

 普通ならばそうだ。たいていは、だ。


 これまでまったく結婚の気配さえ見せなかったアンドレアだ。

 女性と交流を取っているというだけで、かなりの注目を集めた。

 そして噂好きの貴族たちによって、エステルもきちんと交流しているようだ分かった。

(……私とは、社交以外は会う理由も作ってくださらないのに)

 アレス伯爵が娘を連れ、王宮でアンドレアも交えて茶会をしたという話も流れてきた。

 そうすると両親も、さすがに少し心配した。

「うまくやっているんだろう? お忙しいとか」

 社交はきちんとしている。
 公務にも、必要な際には同行させてもらってはいた。

 けれどその姿だけを見て『うまくいっている』なんて思うのは、魔力量のせいだ。

(――そう、全部、この魔力のせい)

 役にも立たないモノ。

 王太子であるアンドレアを、エステルとの結婚に縛りつけてしまっている邪魔なもの。

 公爵令嬢としてきちんしなければと思い、両親を心配させまいと大人ぶって弱音の一つも吐かなかった。