私の肩から、大きく消えない裂傷痕がついた。

 光熱に悩まされた私がようやく目覚め、診察を受けていた時、やってきた王太子が言葉もかけず去っていく後ろ姿に、私は『未来の王妃が、聞いて呆れる』という言葉を見て取った。

 私にとっても怪我の痛みはショックが大きくて、繊細になっていたから。

 それでいて私は、あの王子様に恋をしてしまっていたから。

 王家にとっては、私が婚約者であったため事件へ介入せざるをえなかった。あまり貴族同士のもめごとはよくなくて、そこに王家が入って個人的に助ける形に見えてしまうのも、よくない。

 私の父も、かなり奔走したとはあとで母に聞かされた。

『こちらでやっておく、君は気にしないでいい』

 二度目の訪問をしてきた時、アンドレアは目も合わさずそれだけ告げた。
 彼にとっては、婚約者が私であったために、自分もその事態収拾に巻き込まれてしまったことも煩わしかったのかもしれない。

 彼は、魔力量以外にも、王妃としての仕事の価値を求めたのだ。

 手間のかかる女――私という結婚相手を憎んでいると言ってもいい。