テーブルの上に、今日アンドレアが来ることを考てエステルが用意させた紅茶と、つまみの砂糖菓子が並ぶ。
(彼が来るのは、十一年ぶり――……)
婚約したばかりだった頃、一度だけ彼の訪問があった。
湯気がたちのぼるティーカップを眺め、心を落ち着かせようと思ってそんなことを考える。
すると聞こえてきたアンドレアの言葉に、どきりとした。
「ここに来るのは、十一年ぶりだな」
「は、はい、そうですね……」
「俺がこの紅茶が好きなのをまだ覚えていてくれて、嬉しい」
またしても驚き、エステルはパッと彼を振り返った。
「ど、どうして」
「君と話したことなら全部覚えてる。君がこの店の紅茶を好んでいて、珍しいアゼラの花が混ぜられたこの紅茶が好きで……癖のある甘い香りがする紅茶だ。俺も、初めて飲んだ日に好きになった」
「そう、でしたか……」
メイド達が頭を下げて出ていく。
普段は開けっぱなしの両開きの扉が、静かに閉められていくと、広いサロンは二人きりになった。
(彼が来るのは、十一年ぶり――……)
婚約したばかりだった頃、一度だけ彼の訪問があった。
湯気がたちのぼるティーカップを眺め、心を落ち着かせようと思ってそんなことを考える。
すると聞こえてきたアンドレアの言葉に、どきりとした。
「ここに来るのは、十一年ぶりだな」
「は、はい、そうですね……」
「俺がこの紅茶が好きなのをまだ覚えていてくれて、嬉しい」
またしても驚き、エステルはパッと彼を振り返った。
「ど、どうして」
「君と話したことなら全部覚えてる。君がこの店の紅茶を好んでいて、珍しいアゼラの花が混ぜられたこの紅茶が好きで……癖のある甘い香りがする紅茶だ。俺も、初めて飲んだ日に好きになった」
「そう、でしたか……」
メイド達が頭を下げて出ていく。
普段は開けっぱなしの両開きの扉が、静かに閉められていくと、広いサロンは二人きりになった。