エステルへの婚姻の打診を受けていた第三位王子アルツィオは、ティファニエル国王から縁談話が消えたことのお詫び、とのことで、うまいことまんまとリリーローズとの婚約を勝ち取ったようだ。

 ただ、アンドレアは気にするだろうから、しばらくは会えないと手紙には書いてあった。

『リリーローズとの婚約は、彼の誤解も利用させていただき即決へと〝持っていかせました〟ので、まだ少々都合が悪く』

 手紙を受け取ったエステルは、相変わらず性悪いことをしているらしいと思った。

 アルツィオは、これから自国で婚約に関してすることもあるので帰国するらしい。

 あくまで、本人曰く『一時帰国』らしいけれど。

 まんまと利用されたアンドレアからすると、彼を〝いったん追い出した〟形になるのだろうか。

(事実を知ったら、怒るのではないかしら……)

 エステルは、彼ほどプライドの高い男性は他に知らない。

 そんなふうに思うことができるのも、アルツィオが言った通り、あの舞踏会の夜が結果として確かに『いい日』になったせいだろう。