陰霖に揺れるキミ


それから、毎日放課後はここに訪れている。

「よし、飯にするか」

子犬を降ろしカバンを漁ると、待ちきれないと言わんばかりに周りをピョンピョン飛び跳ねる。
先ほど買った牛乳を皿に注ぐとすぐに音を立て飲み始めた。

この皿はいつの間にかここに置かれていた。
きっと、俺以外にもコイツを見つけて、世話している人がいるのだろう。
俺も毎日来れるわけではないだろうし、他にコイツを見てくれる人がいるなら有難い。

「慌てんなよ」

懸命に飲み進める子犬にパンを見せるとこちらに飛びついてきた。
それを千切って与える。
どれも忙しなく口に入れていく。

そうしてあっという間にチビの食事は終わり。
そこから俺が飽きるまで雨宿りも兼ねてしばらく子犬と遊んでやるのが最近の日常となっていた。
今日も変わらず、そうやって時間を潰す。
晴れならまだ明るいが、雨のせいで薄暗く公園の街灯もすでに点いている。

雨はシトシトと降り続け、屋根から雫が流れ落ちてくる。
ベンチに腰掛け、仰向けに転がった子犬の腹を撫でていた手を止めた。

「よし、そろそろ帰るか」

そう言って立ち上がると子犬も起き上がる。
いつもなら帰ることを察してか、悲しげに寂しげにこちらを見るのだが、今日は違った。

「チビ?」

子犬の視線は俺ではなく、公園の裏手側。
道路とは反対側の茂みに覆われた方向に向いている。

何を思ったのか、子犬はそのままそちらに向かって走り出した。

「あ、おい。どこ行くんだよ」

雨に濡れながらその白い小さな体は草の間を割いて、茂みの奥に入っていった。

そのままにはしておけない。
名前を呼んでも帰ってくる様子はない。
仕方なく、傘をさし雨の中へ繰り出す。
茂みを掻き分けその後を追うことにした。

濡れた草の間に入る。
土の地面は少し泥濘んでいる。
道と言える道はないが、小さな何かが草を割って進んだような本当に細い通路ができていた。

子犬の姿はまだ見えない。