まだ、放課後から間もない夕刻。
普通この時間帯ならまだ明るいはずだが、この雨のせいで薄暗い。
傘のせいですれ違う人の顔も見えないが、心なしか皆雰囲気も暗く感じてしまう。
途中コンビニに立ち寄り、中に何も入っていないシンプルなパンと牛乳を買った。
そして家までの道中にある公園へ立ち寄る。
小さな公園で遊具といえば並んだ二つのブランコと象を模った滑り台、真ん中に砂場があるくらいだ。
雨のせいで泥濘んでいる砂を踏みながら進む。
公園の隅、そこにある屋根がついた木製の休憩所へ向かう。
屋根の下に入り、傘を閉じる。
風は弱いため、ほとんど雨水は吹き込んでおらず、テーブルとベンチの一部は濡れていなかった。
「おーい、出てこい」
テーブルに荷物置きながら、声をかけるとベンチの下からヒョコっと小さな頭が覗く。
ソレは俺に気づくとベンチから飛び出し、転がるように足元に駆け寄ってきた。
真っ白な毛に覆われたまだ小さな子犬だ。
小さな尻尾を千切れんばかりに降って、クーンと甘い声をあげる。
「元気そうだな、チビ」
両手を脇に入れて抱き上げる。
顔を近づけると、嬉しそうに頬を舐めてきた。
上手く雨を避けていたんだろう、毛はほとんど濡れていない。
この子犬、俺命名のチビは数日前にこの公園に捨てられているのをたまたま見つけた。
その日は珍しく朝から雨が降っておらず、下校時間まで晴れのち曇りの予報だったため傘も持っていなかった。
しかし、下校時には黒く重い雨雲が空全体を覆い、急足で帰っていたが俺が家に着くよりも雨足の方が早かった。
初め、ポタポタと降り出した雨はまさにバケツの水をひっくり返したかのような土砂降りへとあっという間に変わり全身はずぶ濡れになった。
視界も悪い中そのまま帰るわけにもいかず、ちょうど通りかかったこの公園に飛び込んだんだ。