雨、雨、雨

長い長い雨が町を静かに濡らしていく。
この季節はなかなか太陽を拝めない。
今年は特に雨が多い梅雨らしい。

灰色の世界

全ての輪郭が曖昧になる。
視覚を聴覚を嗅覚を。
全てを雨色に変えていく。

色のない世界の中、彼女は泣く
淋しい灰色の中で。

まるで、嘆くように。
どこか懐かしそうに。

開かれた口から言葉が紡がれる。
でもその声さえも雨音に溶けて、届くことなく消える。

全て灰色に消える。

この色のない世界で雨粒に濡れる紫陽花だけが、やけに鮮やかにみえた。