「もう始まってる?」


 庭先からひょっこりと出した顔に「おう」とだけ返した。


「浴衣着るのに時間かかってさ。ほら誕プレ」


 そう言って、友樹は俺の腕の中にずしりと大玉のスイカを置いた。

 暗がりの中で黒に見える髪は、昼間になると太陽の反射によって、染めたてのまだらな青メッシュが現れる。

 形の良いおでこは丸出しだ。

 すっとして整った顔立ちに、すらっとした首筋。

 すっきりとうなじなんて見せちゃって、明るめのグレーの浴衣を色っぽく着こなしている。

 細長い耳には、きらりとピアスが光る。


「あら、色男」

「あ、おばさん、今年もお邪魔します。はい、スイカ」

「いつも悪いわね」


 先ほどまで父親とあれほど仲睦まじく息子の思い出話に花を咲かせていたのに、隣家の倅に胸をときめかせる母親の姿は見てられない。