八月十五日の花火


 いつの間にか美緒も慌ただしい準備の手伝いに加わって、今まで隣に感じていた青春の甘酸っぱさはすっかり消えてしまっていた。

 その代わり、「ほら」と手元にコーラの入ったグラスが渡される。

 顔を上げると、友樹が何でもない顔をしてそこに立っていた。

 俺は何も言わずにそっとグラスを受け取った。


「よかったな」


 不意に友樹がそう言った。

「え?」と見ると、目元をワクワクさせながら、真っ暗な夜空を仰いでいる。


「今年も「享平」打ち上げてもらえて」

「え? ああ……まあ……」

「それに、美緒にも告れて」


 その言葉に、俺は隠しきれない動揺で声を震わせながら、「はあ? 告ってないし」と鼻で笑って強がった。
 
 その声が何ともおどおどしていて情けない。


「え? マジ? あの雰囲気はもう告ったのかと思ったのに」

「見てたのかよ」

「そりゃあ、あの場にいたみんな、穴と言う穴を開いて見守ってたよ」

 うーわ……と、げんなりだ。

 だけど俺は気持ちを引き締めてから、「ひひひ」といやらしく笑う友樹に言った。