八月十五日の花火

「俺、美緒のことが……s……」


 その時だ。


「じいちゃんよりメッセージ。『享平』打ち上げ一分前」


 けたたましいサイレンのごとく、座敷の方から母さんの声が早口で張り上げられる。


__なぜ、このタイミング……?


 すると、居間から父さんと友樹でアウトドアテーブルが庭に運び出される。

 そして母さんがコーラの入ったグラスやら寿司桶やら唐揚げの山やらをウエイトレスばりのバランスで両手に乗せて庭先に準備し始める。

 急に襲ってきた喧騒に、呆れて全身から力が抜けた。


__なぜだ。なぜ打ち上げ一分前の前に用意するということをしないんだ。


 いつもこうだ。

 毎年こうだ。

 一分前の連絡が入ると急に慌ただしくなるのは。

 毎年、毎年。

 毎年……。


 思わずふふっと笑いが漏れた。


__そうだ。毎年のことだ。


 墓参りに行った後は、俺の成長記録が電波ジャックして、変わらないパーティーメニューが並んで、近所中に広がる線香臭さは、花火大会が始まる少し前からケーキが焼ける甘い匂いに変わって。

 懐かしさに顔をほころばせる両親の姿を遠目に見て、スイカを持った色男を縁側で出迎えて、愛おしい人のメンをくらって、「なんだかなぁ……」なスイカ割りに苦笑いを浮かべて。

 打ち上げ一分前の慌ただしい号令に、「なんで一分前の前から準備できないんだよ?」と呆れて。

 見事な大輪の花が、夜空とこの慌ただしい時間に彩りを添えてくれる。

 そして、それを離れた場所から打ち上げる、祖父の、命がけの仕事に思いを馳せる。

 そんな一日。

 今日も変わらない。

 毎年同じ、いつもの八月十五日。