八月十五日の花火


「あ、私、家に忘れ物した。ちょっと取りに行ってくるね」


 そう言って美緒は俺のそばを通り過ぎていく。

 俺は咄嗟にその手首をとった。

 そして、ぎゅっと握った。


「きょ、享ちゃん?」

「……こ、コテ」

「え?」

「油断、した?」


 戸惑う表情の美緒に、俺はイケメンでもない顔を整えた。

 そして唇を舐めて、次の言葉の準備をした。

 言うべき言葉。

 いつも言えなかった言葉。

 いつまでも言えなかった言葉。

 弱くて、自分に自信がなくて、好きな女子を守れる強さのない自分が嫌で。

「いつ言うの?」と何度も自問したけど、その答えを自信をもって返せなかった。

 でも今なら言える。

 その答えは、いつもただ一つ。


__今でしょ。


 後回しなんて絶対ダメだ。

 今だ。

 今言うんだ。


 震える唇から、声を振り絞る。