「あ、私、家に忘れ物した。ちょっと取りに行ってくるね」
そう言って美緒は俺のそばを通り過ぎていく。
俺は咄嗟にその手首をとった。
そして、ぎゅっと握った。
「きょ、享ちゃん?」
「……こ、コテ」
「え?」
「油断、した?」
戸惑う表情の美緒に、俺はイケメンでもない顔を整えた。
そして唇を舐めて、次の言葉の準備をした。
言うべき言葉。
いつも言えなかった言葉。
いつまでも言えなかった言葉。
弱くて、自分に自信がなくて、好きな女子を守れる強さのない自分が嫌で。
「いつ言うの?」と何度も自問したけど、その答えを自信をもって返せなかった。
でも今なら言える。
その答えは、いつもただ一つ。
__今でしょ。
後回しなんて絶対ダメだ。
今だ。
今言うんだ。
震える唇から、声を振り絞る。


