お盆期間中に先祖の魂がこの世に戻ってくる日や、あの世に帰って行く日というのは諸説あるらしい。

 だけど、うちは八月十五日と決まっている。

 じいちゃんがそう決めた。

 だから諸説あっても、うちはそういうことになっている。

 なぜなら、今日は俺の誕生日だからだ。


「孫の誕生日に帰ってこない先祖がどこにいる?」


 俺のために先祖の魂は我が家に帰って来るらしい。

 ただ、この日が誕生日であることを、俺は少々複雑に思っている。

 だってお盆真っただ中だよ。

 先祖の魂が帰って来るって聞こえはいいけど、正直、気味が悪い。

 霊がその辺をうようよしてるって想像するだけで寒気がする。

 小学校低学年まで、この時期はトイレに一人で行けなかった。

 それに、何だか地味だ。

 スーパーのお盆商戦は実に味気なく、薄墨風に印刷された「お盆」のポップに、ポップさは全くない。

 お盆に行く場所といったら、母親の実家か先祖代々の墓ぐらいだし。

 そして何より特筆しなければいけないのは、この八月十五日が、終戦の日ということだ。