美緒は、うっすらと水色がかった生地に、朝顔の花が散りばめられた浴衣を身にまとっていた。

 朝顔のぱっと開いた花びらが、まるで花火のようだった。

 年々そのデザインと着こなしが大人っぽくなっているのは気づいている。

 いつも背中で揺らしているサラサラのロングポニーテールも、今日はうなじ辺りで一つにまとめている。

 髪が、全体的にふわふわとしている。

 遅れ毛なんかもいっちょ前に出しちゃって、色気が中三とは思えない。

 多少化粧もしているのか、いつもより目元がぱっちりして、肌にキラキラと光るものがかすかに見える。

 そして、甘いいい香りを漂わせている。


「ん? うん……いいんじゃない?」


 と、さりげなく美緒と距離を置きながら答えると、「もっとないの?」と不服な声が返ってくる。


「頑張って準備したのに」

「そんなんだから、いつも花火の時間に間に合わないんだろ?」

「もうひどいなあ。女の子はね、準備に時間がかかるものなの。そんなんだから享ちゃんはモテないんだよ」


 言い返す言葉もないので、唇を突き立てて不服の意を示す。


「心配しなくても、ちゃんと部屋から打ち上がるの見てたよ。私、享ちゃんのおじいちゃん花火、好きだし」


__部屋から……


 俺はそっと、隣の家を見上げた。

 美緒の部屋の窓は、探さなくても目が勝手にとらえる。

 レースのカーテンが、少しだけ開いている。


__ちゃんと閉めて着替えたんだろうな。


 急に顔に熱が集まってくるのを感じた。