俺は聞いた。


「なんでお前まで辞めるんだよ」


「だってさぁ……」と友樹は鼻歌を歌うような感じで軽く前置きしてから、


「剣道部って、ピアスダメじゃん?」


 にっと笑ってそう言った。

 そのあっけらかんとした理由に、俺もほとほと呆れた。

 笑えなかった。

「校則的にアウトだからな」なんて、鋭くツッコむ気にもなれなかった。

 そんなのが理由じゃないことぐらい、わかってるから。


「それに……」と友樹は続けた。

 俺に背中を向けたまま、夏の真っ青な空を仰いで。


「俺は面取ってお前と話す方が、好きだから」


 その凛とした立ち姿は、夏の太陽よりもずっとまぶしく、俺は思わず目を伏せた。