『ぼくは、おっきくなったら、まほうししょさんになりますっ!』


 魔法図書館が立地されている敷地まで辿り着くと、ゲストを招き入れるために銀白色の門が自然に開かれる。


『シルヴィンは、魔法司書になりたいの?』

『はいっ!』


 1歩足を踏み入れると、どこからともなく一羽のフクロウさんが飛んでくる。

 そのフクロウさんは人間の言葉を話してくれて、図書館に到着するまでちょっとした世間話で僕たちの心を和ませてくれる。


『ちょうどシルヴィンと同い年の孫がいるんだが……』

『?』

『2人が結婚して、2人で魔法図書館を運営すればいいわ』


 天国にいる、おじい様とおばあ様。

 どうして私に婚約者という存在を隠して、天国に逝ってしまわれたのでしょうか。


「これが、ローレリア様のおじい様とおばあ様との出会いです」

「…………」


 現実に起きた出来事を爽やかな笑顔で語り終えたシルヴィン・ジャスター様は、満足げに私を優しい瞳で見つめてくる。

 どこかの世界で学んだイケメンという言葉の見本に当たる人物こそがシルヴィン様だと言わんばかりに、シルヴィン様の容姿は目の保養になるくらい大変素晴らしい。


「もちろんスフレイン家の皆さんには、ご挨拶を済ませて……」

「家を出た私はスフレイン家の世継ぎにも政略結婚にも関係がない。好きな人と添い遂げなさいということでしたね……」

「はい」


 婚約者という言葉すら聞きたくない私は、なんとしてでもシルヴィン様を追い出したかった。

 けれど、話を聞かずに追い出してしまうのも率先して破滅の道に進んでいるような気がした私は、仕方なく! 仕方なく、彼にお茶を出した。


「では、早速挙式の準備を……」

「結論から申し上げますと、魔法図書館は私が相続した財産です」


 シルヴィン様と出会うまで知らなかったけれど、私が住まいとして使用している建築物は魔法図書館という名称らしい。


「ですから、これからは夫婦として……」

「いえ、私は魔法図書館を運営することなく、住居として使用していきます」

「そんな!」

「驚きすぎです……」


 魔法図書館とは、学問の世界では説明することができない魔法と呼ばれる力で管理されている図書館。

 昔はそんな夢溢れる魔法図書館を祖父母が運営していたらしいけど、現在の魔法図書館は図書館としての機能を果たしていない。

 私が安心して暮らすための住居と化している。