ネットの『今ドキ女子高生のコーデはこれで決まり!』という記事を参考に、ショッピングモールの中にある、リーズナブルなレディースブランドで服を選んでいく。
自分で服を買うこともたまにはあるけど、いつもはだいたいお母さんと服選びをするので、迷ってしまう。
……例のデート(?)で茜くんに買ってもらった服はあるけど、さすがに直樹くんとの勉強会にそれを着ていくわけにはいかないし。

「こんな感じでいいかなあ……?」

サイトでは『清楚&ガーリッシュ!』とイチオシされていたブランドの服と、靴。それをいくつか試着してみて、気に入ったものをお会計に持っていく。
……バイトをしてない学生のおこづかいからするとちょっぴり痛い値段だけど。まあ、今まで貯めたおこづかいがあるから、なんとか大丈夫だ。
買ったものは、店員さんにかわいいショッパーに入れてもらう。そして、ありがとうございましたあ、という声を背にしながら、私はちょっと上向いた気分でお店を出た。
(このまま、ちょっとだけ一階の本屋さんとかに寄って帰ろうかな……、)
と、そう思って、エスカレーターに差し掛かろうとした、その時だった。

「……ひな?」
「っ!」

すぐ横から蒼の声が、した。
反射的に、バッ、と横を見る。
私が今いる二階への――『上り』のエスカレーターの執着点。……蒼は、そこに立っていた。

「あ、蒼、」

なんでここに?
聞く前に、蒼が手から提げているビニール袋が目に入った。一階にある本屋さんのものだ。きっと本屋さんで買い物をして、上のフロアに上がってきたのだろう。
そこまで考えて――一週間ほど前、感情の赴くままに本音をぶつけた時のことがフラッシュバックした。
かっ、と頬が熱くなる。

「……ぐ、偶然だね! じゃあ、私これでっ――きゃっ⁉」
「っ、ひな!」

よみがえった記憶に、とても顔を見ていられなくなって。
慌ててエスカレーターを駆け下りようとして、それで――動く階段に、足が滑った。
ぐらり、と上体が傾ぐ。
エスカレーター、その下に向かって。

「っ……!」

まずい、落ちる――!