(なんて、私が信じたいだけかもしれないけど。)
たとえ好かれてなかったとしても、嫌われてはないはずだ、って。
本当に、未練がましくてみっともない――。
「……で? 何の用、宮野。」
「あ、の……それは……、」
言葉に詰まって、視線をうろつかせる。
……だって本当に、何も考えずに追いかけてきちゃったから。
いろいろ聞きたいことはあるけど、それを今尋ねる覚悟はまだ決まってない。
蒼は、しどろもどろになる私を、しばらく怪訝そうに見ていたけれど、やがて「何もないならもう帰るぞ。」と素っ気なく言った。
「というか、宮野、佐古と付き合うことになったんじゃねーの? オレと一緒にいるところを見られたら困るんじゃないのかよ?」
「は……?」
一瞬、何を言われたのか理解できずに、硬直する。
呆然と蒼を見返すと、蒼は変わらず眉間にしわを寄せたまま、不機嫌そうな表情だ。
(なんで……そんなこと)
付き合ってないよ。まだ蒼のことが好きなのに、付き合えるわけないよ。
私は唇を噛んだ。よっぽど反論してやりたかったが、声が出てこない。
……それとも蒼も、ふられたからってすぐに他の人と付き合えるほど、私の気持ちが簡単なものだって思ってるの?
酷い、と思った。手紙を嗤っていた蒼を目撃したあの時みたいに、全身に氷水を浴びせかけられたような心地になる。
――いや、わかってる。これは私が勝手に傷ついてるだけだ。
蒼には、私を気持ちを汲み取る義務なんてない。こっちはまだあなたが好きなのに、すぐに他人に乗り換えるような人に見えるの――なんて非難できる立場にもない。
それでも。
「一緒にいるところを見られたら困るのは、蒼の方なんじゃないの……⁉」
――そんなふうに、言ってほしくなかった。
蒼が私を嫌っていても、せめて私の気持ちだけでも、ちゃんと伝わっていてほしかった。
「は? 何言ってんだよ、いきなり……。」
「いきなりじゃないよ。私が蒼のことをまだ好きでいること、鬱陶しいんだよね? 私の気持ちはずっと迷惑だったんでしょ?」
だめだ、やめろ、言うな。
頭の中の冷静な部分が必死で口を閉じようとするのに、それでも勝手に、みにくい本音を次々吐き出してしまう。ヒステリーを起こしてるみたいに、甲高い声で。
……周囲にあんまり人がいなくて、それだけはよかったと思う。理子と話し込んでいたために、もうすでに部活の時間に突入していたのだ。部活のある生徒は逆に、もう少し経たないと戻ってこない。
「おい、宮野……。」
「迷惑なら迷惑だってはっきり言ってよ。『オレと一緒にいるところを見られたら困るんじゃないのか』なんて、私のことを気遣うふりしていい人ぶったりしないでよ。……もう二度とオレに近づくな、気持ち悪いんだよ、ってそう言われれば、私だってちゃんと蒼のことを諦められるよ!」
たとえ好かれてなかったとしても、嫌われてはないはずだ、って。
本当に、未練がましくてみっともない――。
「……で? 何の用、宮野。」
「あ、の……それは……、」
言葉に詰まって、視線をうろつかせる。
……だって本当に、何も考えずに追いかけてきちゃったから。
いろいろ聞きたいことはあるけど、それを今尋ねる覚悟はまだ決まってない。
蒼は、しどろもどろになる私を、しばらく怪訝そうに見ていたけれど、やがて「何もないならもう帰るぞ。」と素っ気なく言った。
「というか、宮野、佐古と付き合うことになったんじゃねーの? オレと一緒にいるところを見られたら困るんじゃないのかよ?」
「は……?」
一瞬、何を言われたのか理解できずに、硬直する。
呆然と蒼を見返すと、蒼は変わらず眉間にしわを寄せたまま、不機嫌そうな表情だ。
(なんで……そんなこと)
付き合ってないよ。まだ蒼のことが好きなのに、付き合えるわけないよ。
私は唇を噛んだ。よっぽど反論してやりたかったが、声が出てこない。
……それとも蒼も、ふられたからってすぐに他の人と付き合えるほど、私の気持ちが簡単なものだって思ってるの?
酷い、と思った。手紙を嗤っていた蒼を目撃したあの時みたいに、全身に氷水を浴びせかけられたような心地になる。
――いや、わかってる。これは私が勝手に傷ついてるだけだ。
蒼には、私を気持ちを汲み取る義務なんてない。こっちはまだあなたが好きなのに、すぐに他人に乗り換えるような人に見えるの――なんて非難できる立場にもない。
それでも。
「一緒にいるところを見られたら困るのは、蒼の方なんじゃないの……⁉」
――そんなふうに、言ってほしくなかった。
蒼が私を嫌っていても、せめて私の気持ちだけでも、ちゃんと伝わっていてほしかった。
「は? 何言ってんだよ、いきなり……。」
「いきなりじゃないよ。私が蒼のことをまだ好きでいること、鬱陶しいんだよね? 私の気持ちはずっと迷惑だったんでしょ?」
だめだ、やめろ、言うな。
頭の中の冷静な部分が必死で口を閉じようとするのに、それでも勝手に、みにくい本音を次々吐き出してしまう。ヒステリーを起こしてるみたいに、甲高い声で。
……周囲にあんまり人がいなくて、それだけはよかったと思う。理子と話し込んでいたために、もうすでに部活の時間に突入していたのだ。部活のある生徒は逆に、もう少し経たないと戻ってこない。
「おい、宮野……。」
「迷惑なら迷惑だってはっきり言ってよ。『オレと一緒にいるところを見られたら困るんじゃないのか』なんて、私のことを気遣うふりしていい人ぶったりしないでよ。……もう二度とオレに近づくな、気持ち悪いんだよ、ってそう言われれば、私だってちゃんと蒼のことを諦められるよ!」