翌日、月曜日。
 登校してくると、なんだか周りが騒がしいような、そんな気がした。

 こちらをちらちら見て、ひそひそと囁き合う声が、あちらこちらから聞こえてくる。
 ……なんというか、みんなに見られてる?
 なんでだろう。私そんな変な寝ぐせとか、ついてたりするのかな。
 不審半分、恐怖半分の気持ちのまま、自分のクラスに入ろうとして、

「ひな!」
「理子。おはよー、」

 なぜか、焦ったような表情を浮かべている理子がこちらに走ってくることに気がついた。
 理子は私に近寄ってくると、がし! と肩を掴んできた。そこそこの力を籠められ、私は驚いて「うわっ⁉」と思わず声を上げる。――一体、なんだというのだろう。

「ちょっとひな! あんた、ちょっとまずいことになってるよ!」
「え……?」
「ほら、これ見て!」
「ええ……?」

 まずいことになってる、とは? 話が見えなくて、困惑する。
 理子は辺りに人がいないかさっと確認すると、スマホを取り出して――うちのy通学はスマホの持ち込みが禁止されていて、使っているところを見つかったら没収されてしまう――私にその画面を見せた。

 理子が私に見せたのは、中高生がよく使う、メッセージアプリ。有名SNSのトーク画面だった。
 そしてそこに表示されているのは、どうやら、写真のようで。

「これ、ひなでしょ⁉」
「あ……、これ、なんで……?」

 驚いて、目を丸くする。
 ……写真は、私と茜くんが写されたものだった。写真の中の私たちは土曜日一緒にデート(仮)をしたときの服装をしていて――ショッピングモール内とわかる通路を、ショッパー片手に二人で歩いていた。

 明らかに、少し距離のあるところから撮影されている。

「隣の人は……篠崎に似てるけど、篠崎じゃないよね?」

 理子が探るような目で聞いてくる。 
 私はいまいち状況が理解できないまま、戸惑いつつも頷く。

「あ、うん……。篠崎茜くんって言って、蒼の従兄なの。……っていうか理子、どうしてこんな写真がSNSで出回ってるの?」
「……たぶんだけど、事態を面白がってる篠崎の友達が、撮った写真をクラスに回したんだと思う。」

 苦々しい声で、理子がそう言う。
でも……事態を、面白がってる? それって、どういうことだろう?
 私がそう尋ねると、理子は眉を顰めてため息をついた。

「そんなの、決まってるでしょ。篠崎蒼に告白したばっかりの宮野雛子が、篠崎蒼とそっくりな別人と休日にデートしてた、ってことだよ。いっつも人のうわさ話でヘラヘラ楽しんでるやつにとっては、面白がる格好の材料じゃん!」