とある国の姫に呪いをかけた罪で、国外追放された魔法使い。

 けれど、実際は円満に契約を終わらせたというだけの話。


「リザ、体調は大丈夫?」

「はい、おかげさまで」


 国を出た僕を待っていたものは、亡くなった祖父母の遺産相続の手続きをお願いしたいという話。


「あ、でも、突然眠たくなってしまう体質で……」

「呪いの件は把握したから、いつでも眠って大丈夫だよ」

「とても心強い言葉をありがとうございます……」


 物を持たない生き方が楽だと言っていた祖母だったから、これと言って形見と呼べる物も残らなかったと聞いていた。


「城の外に出るときは、いつ眠ってもいいように透明化の魔法とか防御の魔法とか……魔法使い様に教わっていたのですけど……」


 けれど、血縁者の僕に唯一残していった物があった。

 魔法図書館の管理権。

 祖母が魔法図書館を管理していることすら知らなくて、最初は権利を放棄してしまおうかと思った。

 だけど、姫の元を離れる良いきっかけになると信じ、僕は祖母からの遺産である魔法図書館を相続した。


「長旅の疲れもあって、魔法を維持することができなかったんだと思うよ」

「……私の中から魔法が失われたわけではないんですね」


 いつか、魔法は世界から失われてしまう力。

 そんな貴重な力を使ってまで、図書館を運営することはないと言われている昨今。

 それでも魔法図書館が人気を博していることは事実。


「魔法を使えなくなったら、無職になってしまうところでした」

「もっと気を遣うところもあるんだけどね」

「改めて、これからご指導のほどよろしくお願いいたします」


 僕が幼い頃に関わりのあった魔法使いだということを知らずに、彼女はこれからの……これから向かう未来の話を、昔と変わらぬ明るい笑みを浮かべながら話をしてくれる。


(はぁ……いつ、打ち明けるべきか……)


 完全に、話をするタイミングを逃した。

 リザは国外に追放された魔法使いの安否を確認するための旅に出ると言っていたから、僕の安否が確認できたら国に戻ることもできる。国に戻すこともできる。


(けど……)


 呪いをかけた想い人が、素敵な笑顔を浮かべて生きる日々を見守りたい。

 叶うなら、彼女を幸せにするのは自分でありたい。