「僕だけを除け者にするなんて!」


 孤独に耐えることができなかった魔法使いは、とある国の姫の生誕祭で1つの呪いを残します。


「姫に永遠の眠りを贈ろうじゃないか」


 魔法使いは、国の姫に呪いをかけることに成功しました。


「…………おやすみなさい……」

「リザベット様! こんなところで眠らないでください!」


 魔法使いの悲願は果たされたのですが、姫は物心つく頃には目を覚ましてしまったのです。


「どうして姫に、僕の魔法が効かないんだ!」

「いやー……魔法の崩壊が始まっていると言いますか……」


 魔法使いは国に仕えていたこともあり、特別な処罰が下ることはありませんでした。

 ただしそれは、魔法の力を恐れて処罰を下すことができなかったというのが正しい言い分。


「魔法使い様には大変申し上げにくいのですが、そのうち魔法と呼ばれている力は消滅してしまうんです」


 いつか、魔法が滅びゆく世界。

 その、いつかがいつ訪れるかは誰にも分かっていない。

 けれど、いつか魔法が滅びるのは確定事項。


「魔法使い様……おはよう……ございます……」

「うっ……おはよう……」


 魔法の力が弱まりつつある昨今。

 魔法使いの魔法は、中途半端なかたちで姫の中に残ってしまったのです。


「眠っても……眠っても……眠くて……申し訳ございません……」


 永遠の眠りではなく、突然睡魔に襲われてしまうという体質を得た姫。


「……そのうち、嫌でも魔法は解けてしまうよ」

「魔法使い様の呪いは……なくなるんですか……?」

「…………ああ」


 名を、リザベッド・クレマリー。


「お父様! お母様! どうして魔法使い様を国外追放……に……」

「おまえに呪いをかけたからだよ」

「でも……私は……生きて……」


 時は、非情。

 時の流れは、残酷。


「いつか魔法が滅びてしまうなら、もう国に仕える魔法使いは必要ない」

「でも……でも……」

「国に仕えていたために処遇を甘くしていたが、私たちは魔法使いを恐れる必要がなくなったんだ」


 まだ、世界に魔法は残っているのに。

 まだ、世界から魔法が失われたわけではないのに。

 畏怖の対象でなくなったという理由で、魔法使いは国外へと追放された。