「お菓子、辞めるんじゃなかった?」
学校の帰り道、いつもと同じく爽汰と歩く。私が頬で飴玉を転がしていることに気づいたらしい爽汰が言った。
「21時以降ね」
「効果ある?」
「来月は20時にするわ」
私の投稿を見たんだろう。昨日投稿した卒業予定内容を突っ込まれる。
「てか、さくらも始めたんだ」
「うん。もうすぐ卒業だし流行りに乗っておこうと思って」
「ふうん、推薦合格者は余裕だよなあ」
「爽汰はやらないの?卒業日カレンダー」
「今俺の頭には2月の『勉強からの卒業』しかないわ」
爽汰が私をふざけて睨んでから笑う。
「余裕がある3年多すぎじゃない?」
「みんながみんな大学に行くわけじゃないし」
美月も美容専門学校に行くことが決まっている。
「それに受験生も結構投稿してるけどね」
『#卒業日カレンダー』には大学入試にまつわる投稿もたくさんある。最近共通テストが終わったばかりだから『共通テスト卒業!』をよく見かけた。
ハッシュタグを見るために入り浸りさえしなければ、願掛けのおまじないとしては入試を控えた人こそ向いている気もする。
「あーずる」
「あと少し頑張って」
「推薦のやつに言われてもな」
「明日も塾?」
「うん」
勉強が忙しい爽汰と過ごす時間は格段に減った。
塾がない日の下校時間だけは死守しているけど、それ以外は一緒になかなか過ごせない。
爽汰と一緒にいられる時間はあと少しなのに。
・・
私と爽汰とはずっと幼馴染を続けてきた。
幼稚園児の頃に始めた習い事が同じで、マンションが同じで、親同士が仲良くなっていつも遊んでいたから。親が忙しくなり、家族ぐるみで会うことはほとんどないけれど、高校までずっと同じだった私たちは自然と一緒にいた。
でも、もうそれもあと少しで終わってしまう。
爽汰は夢のために東京の大学に行くから。