目の前にいる、
雛斗のTシャツをギュッと握った。



「咲子。悪いけど、残念ながら、
卑怯って言われてもさ、〝俺は俺〟なんだよねー」



〝俺は俺〟を明らかに、強調して言う雛斗。



言葉にはトゲがあるのに。



そのくせ、私の頭を、
──────ポンッと撫でてくる優しさ。



「.........っ、ぅ、ごめっ、そんなつもりじゃ、」



雛斗の優しさに、
胸が熱くなって、謝ると。



「うん。分かってる。
俺は、咲子のこと、全部分かってるよ」



そう言って、
小さい子供をあやすような撫で方の雛斗。



私は子供なんかじゃないけど。



──────その優しさに甘えたくなる。