「俺は家族がいるから……頑張らなくちゃいけないのに」
 メンバーの中で唯一の世帯持ちのイチヤは不安になる。
 大手の事務所、ドームツアーもできるアーティストグループの1人というだけで仕事は今後もあるのかイチヤは不安になる。
 ちなみに妻帯者というのはファンにも周知の上であり、子供も二人いる。

 果たして自分一人で何ができるのだろうか。不安しかない。

「3年後まで辞めないでくれよ……せめて」
 イチヤはしゃがみ込む。

「……人類滅亡のあとの三年を後悔のないように過ごしたい」
 と手を合わせて二人に懇願するが……

「他のメンバーは……一人まぁ不祥事あって辞めたけど、みんなそれぞれ芸能だったり一般人として自分の得意なものを持ってて脱退してからも活躍してる。僕も早く辞めたかったのに……イチヤが残ってたから事務所も辞めるなって」
 とチュウジ。

「お前は人気グループのアイドルの一員って言うだけで自分がなかった。それだけで甘い汁を吸って。俺はそれが嫌いだった」
 子供の頃から歌と踊りを特訓して人との関わりを大事にするよう親から言われて育ってきたサクラがそう言う。

「待ってくれよ。……せっかく8年やってきたろ脱退や逮捕があっても乗り越えてきたじゃないか! 今も8周年ライブで盛り上がってたのに」
「周年ライブだからなぁ……」
「来年はもっと特別な周年ライブじゃないか。ナインズカンパニー、9がつく……」

 彼らのグループ名はメジャーデビュー結成当初9人で始まったのでナインズカンパニー。
 実の所メジャーデビュー1年で1人が不祥事で逮捕されてしまい8人での再スタートになってしまったのだが。
「今は3人、いや来年にはどうなることやら」
 チュウジは鼻で笑った。