和装のメイド服のようなものを着せられ、開始された召使い授業。


「もっと姿勢をよく!!ホコリが残ってますよ!!」
「は、はいぃっ……!!」

ゼェゼェ息を切らしながら、ホコリを叩く。 

(つ、辛い……!!)
「そんなんじゃあの当主と結婚!いいのですか!」
「やです!!」

呆れた目で遠くから鈴を見つめていた伊織。

「じゃあもっとシャンとしなさい!」
「はいっ!!」

バシッと背中を叩かれて、鈴は背筋を伸ばした。
その瞬間、伊織が近づいてきて七瀬を睨みつける。

「おい……俺の花嫁だぞ、もっと丁重に扱え」
「おやおや、鈴様はあなたのものにはなりたくないご様子ですよ。なのでビシバシ厳しくしているのです」

うふふふと上品に微笑む七瀬は、どこか腹黒さをその笑顔に帯びている。


「だから花嫁にはなりませんて……!!」
「はぁ……頑固なお前も愛おしいが、ほどほどにしないと俺が持たない」
「え?」


また顎に手を置かれ、視線を合わされてしまう。


「好きになれ、鈴」
「……む、無理です……」


なんだか鬼堂の瞳が真っ赤に光った気がするが、そんなことはもはやどうでもいい。

ヒヤヒヤと自分と鬼堂のことを見つめる周りの使用人たちの視線が気になって仕方がなかった。