肩に手を置かれて、距離が縮まる。すると鈴の顔が真っ赤になってしまった。
「ち、近いです!」
「ん?真っ赤じゃないか。まさか照れているのか?」
「て、照れてなんか……!!そ、そっちこそ、照れてるんじゃないですか!?」
 言い返してやろうと思い、そういうと手首を掴まれる。
 そしてその手を鬼堂の心臓辺りにつけられると……。
 ドクドクドクと尋常じゃない速さの鼓動が伝わってきたのだ。
「えっ……は、早……!!」
「俺も緊張しているらしい。顔には出ないがな」
 あははと微笑む鬼堂だが、やはり本気で鈴に懸想しているらしい。
「ほ、本当に冷静な顔して……な、なんか面白いですね」
 真顔でそんなことを言われてしまう鬼堂だがそれもまた面白くて笑みを溢す。
 言わずもがな、狼が驚いて目をまん丸にさせていた。

(あの当主様、昨日から本当表情豊かで……怖……)

「それで、話とは何だ?」
「怒らないでくださいね」
「ああ、約束しよう」
「実は私、あやかしと暮らしているんです」
 鈴が言葉を発した瞬間、外に大きな雷が落ちた。
「っ!?か、雷!?晴れてるのに!?」
「すまない。俺の異能力が発動してしまったらしい」
「い、異能力!?け、怪我人がいないなら別に大丈夫ですけど……」
「お前は優しいな」
「はは……」
 柔らかい表情をさせていた鬼堂だが、徐々に雲行きが怪しくなっていく。
「それで……あやかしとは、どういうことだ?」
「あ、あやかしって言っても……猫みたいなものなんですが……」
「猫又と浮気していたのか」
「んなっ!!そんなんじゃありませんよ!」
「じゃあなんだ?」
「代々うちで飼われてたらしいんです。本人が言うに魔力がほぼないに等しいから、前の当主様に認められて現世にいただとか」
「そうか」
 よくやく納得してくれたのか、少し落ち着いた鬼堂を見てホッと胸を撫で下ろす。