「鈴、鈴。起きて朝だよ」
「う、うう……」
 身体をだるそうに起こしたのは、今年で高校三年生になる三上鈴(すず)だ。
 そして……そんな鈴を起こしたのは。
 三角の耳、可愛らしいつぶらな瞳。
 普通のサイズよりはるかに大きな三毛猫だった。
 猫の名前は美鈴。
 あやかしである。
「高校、始まっちゃうよ!」
「今日は高校ないんだよぉ……」
 目を擦りながら鈴は言う。本日は、100年に一度の人間が恐るべき日だ。
 学校どころの騒ぎではなかった。