「だ、だいじょうぶ、です……」
――受験の大詰めでほとんど神社に来られなかった美也にとって、久しぶりの榊は衝撃が強すぎた。
そもそも、こんなに榊と逢わなかったのは初めてだった。
(いけないいけない。榊さんが神々しいのはいつものことなんだから、今日こそは!)
「前に私、恋愛かどうかはわからない、って言いましたよね」
「……ああ」
「私、榊さんのこと好きです。大好きです。なんかこう、少しだけ離れてみて、わかった言いますか……榊さん?」
逢わないでいた間に、ひとつだけわかった。
それが榊への感情が、恋情であり愛情であること。
早く逢いたかった。もう自分から切り離せない存在になっていた。榊がいないところで生きていく意味がないと思った。
どうしてもどうしても――榊の一番になりたかった。
美也自身、榊の恋人だった人の生まれ変わりというのは承知している。
美也の中でだんだん、記憶にないけど憶えていること、が増えていった。それが彼女の記憶だと、なんとなく理解して、それでも嫌な感覚はなかった。
巫女は自分であり、自分は巫女でもあるのだと。
同一人物ということではないが、切り離さなくていい存在、となっていた。
「いや……美也が真っすぐすぎて……可愛くて……だな」
「か、からかわないでくださいっ」
「からかってない。……先ほどの言葉、撤回はなしだからな?」
「し、しませんそんなこと」
「美也――」
真っ赤になる美也の腕をそっと引いて、榊はその耳元にささやいた。
「――――」
ばっと耳を押さえた美也は、先ほどよりも真っ赤で。
「~~~榊さんっ」
「本当のことだ。美也、これからは恋人として一緒にいてほしい」
「……私からもそうお願いするとこでした」
美也が答えると、榊はぎゅうっと抱きしめてきた。
「榊様―! おめでとうございます!」
「巫女様、榊様をよろしくお願いします!」
「え? あっ」
美也は、小さなあやかしたちの目の前で告白していたことに気づいて、真っ赤になる一方だった。
恥ずかしさから顔をあげられない美也と、嬉しさから美也を抱きしめたままの榊が、小さなあやかしたちの祝福の中にいた。