榊は優しい気持ちで美也を見つめる。
腕の中から突如いなくなってしまった存在。今世こそは幸せになってほしいと、ずっと見守ってきた。
なぜ瘴気に取り込まれたのか、巫女はどういう最期を遂げたのか、わからないことはたくさんある。
だが美也の中に巫女を求めようとは思わない。ただ、巫女という過去世を持った美也を、これからも――
「美也、愛してる。美也がいてくれたら俺も幸せだから、傍にいてほしい」
「っっ、は、はい……」
恥ずかしそうに赤くなるこの子を、二度と手放さない。
今すぐ手元に迎えることが無理でも、これからは自分が彼女を幸せにしていく。
美也が慌てたように体を離して、榊を見上げた。キッとした、凛々しい顔で。
「でもですね、榊さん。『お前は幸せになる』って言ってもらってるので私はそうなることを確信してますけど、私が幸せなことばっかしてもしょうがいないですからね? ちゃんと――二人で幸せになりましょう」
凛々しい様子から一変、ふわりと美也から聞こえたあの言葉。
その言葉に、榊には笑みが浮かんだ。
約束を。
あの日交わして、果たされなかった約束を叶えていく。
美也が幼いあの日に約束したことを、叶えていく。
――榊と美也の、あの日の約束。