「あ、はい。それに関してはなんというか……反抗する気は全くなくて、そうなって自然、という感じがしています。……あれですか? 私が前世とやらで何かやらかしてそういう縛りになってたりします? もしかしてやらかしまくったからお姉様に追い出されたとか――」

「なんでお前は自分がやらかしだと思っている。それこそ、自然に俺のところへ来る形になっただけだ。俺には配下が多く、それぞれが巫女を持っていたから、俺は特別巫女を必要としていなくてな。風来坊みたいな感じだった。だから巫女としてではなく、花嫁として望んだ」

「―――」

花嫁として。

「まあ、言った通り、お前が俺のところへ来ることに不満がなくても、迷いがあるならまだ決めなくていい。あいつが言った巫女修行というのも、今すぐ始めなければならないものでもないから」

やさしく言う榊の眼差しは、美也がずっと受けてきたものだ。

絶対の味方。心の支え。

何があってもそばにいると、物語っている。

「……榊さんは、お姉様の巫女を、……愛していましたか?」

――美也は榊を真っすぐに見上げ、尋ねた。榊は驚いて美也を見返す。

美也は唇を引き結んで、瞳は揺れていた。

美也がどういう答えを望んでいるかは榊には判別しかねたが――

「ああ。確かに、愛していた」

そう、答えた。

「終わった感情……とは、言い切れないと思う。だがこんなことを言えば浮気者とか不埒者と思われるかもしれないが、……美也を愛していて、俺のところに来てほしいと思っているのも、本当だ」

榊が美也への自分の感情を口にしたのは、初めてだった。

気持ちを聞いた美也は……発熱していた。

「美也!? え、なんで!?」

「ふぇ?」

顔を真っ赤にしてゆらゆら揺れ出した美也を支えるように抱きとめると、きゃっきゃと庭で遊んでいた開斗が目ざとく見つけてきた。

「あー! 榊さまがやらしいことしてるー!」

「ふざけんなクソガキ! 帯天呼んで来い!」

「えっ? 巫女さま体調悪いんですかっ? た、帯天さんー!!!」

顔色を変えた開斗が屋内へ駆け込んだ。

すぐに帯天の腕を引っ張ってやってくると、帯天は美也の、榊とは反対隣に膝をついて自分の膝に美也の頭を載せた。