「………すまない、美也………」

「いえ。みんな一緒で私も楽しいです」

わちゃわちゃ、と。美也に小さなあやかしたちがまとわりついていた。

不機嫌をなんとか隠そうとする榊と、榊のそんな気持ちに気づいていない美也は、神社にいた。

奏に連れられて服を買いに出た日の翌日のことだ。

美也は榊から、「人の姿をとれば問題ないだろうから、美也の行きたいところは」と訊かれ、少し考えてから龍波神社と答えた。

以前訪れたときはすぐに学校に向かわなければならなかったから、神社を見ることも小さなあやかしたちと挨拶することも出来なかったことに引っかかっていたのだ。

榊はそれでいいのか? と言ってきたが、美也は、それがいいです。と答えた。

そして本日、奏が何着も試着をさせて選んだ、薄い水色のワンピース姿の美也が龍波神社にいた。

「あはは、みんなかわいー」

「待て待て待て。美也が見えない」

わちゃわちゃとまとわりつく小さなあやかしたちで、美也の姿が消えてしまった。

すると小さなあやかしたちが榊に不満を爆発させる。

「だって榊様がなかなか連れてこないから!」

「また巫女さまに大失恋したんだと思ってました!」

「ねー」

「ねー」

一体ずつあやかしを取り払っていた榊は、その言葉にぎょっとしていた。

「……榊さん」

「な、なんだ……」

「私、榊さんのこと振った憶えないんですけど……」

美也の声は地を這うようだ。

「い、いや……それについては、美也であって美也でないと言うか……」

「榊さん」

「………」

「お話しましょう」

顔を隠していた小さなあやかしを自分でどけて、美也がにこっと笑った。