「いいわ。なんの未練もないって言うか、あいつはガチで浮気してたクソで、関わりたくない相手だったし。だからありがとって言ったのよ」
つん、とした態度だが、奏はそう言ってきた。
こんなときだが美也は、奏はツンデレなのか……と思っていた。
「……今までも、別れてからも絡まれることあったのよ。でもなんか、今ので完全に吹っ切れた感じ。あー、あたしも新しい服見たいわ。飲み終わったら付き合ってくれる?」
「はい! もちろんですっ」
「それからあんた、勉強は進んでるの? あたしも連れ出しちゃったから言えたことないかもしれないけど……」
「………あはは」
美也は笑って誤魔化そうとしたけれど、奏には通用しなかった。
「あたしが使ったのでよかったら参考書とかテキストあげようか? 結構書き込みとかしちゃってるけど」
「えっ、いえ、そこまでご面倒をおかけするわけには――」
「別に面倒じゃないわよ。部屋に置いておいてもあたしには使い道ないし、捨てるのもなんかって感じの物だから、むしろ引き取って」
「い、いいのですかっ?」
学校からもらう教科書やテキストだけで勉強してきたので、受験に向けてテキスト代が浮くのはありがたすぎる話だった。
美也の目がきらきらする。
「いいから話してんのよ。言っておくけど、中色々書いてあるから。教師の秘密とか」
「それはむしろ知りたいんですが」
「今でもいる教師っているかしら? あたしの頃は―――」
「今は―――」
――その様子を窓越しに見ていた開斗と帯天は涙を流していた。
『巫女さま……お強い!』
『っっ』
感激する開斗の隣でぶんぶんとうなずきまくる帯天。
――二人から榊にあがった報告は、『巫女さまには逆らわないでください』だった。
榊は首を傾げた。