どういう意味だろう? と首を傾げると、奏はカップをテーブルに置いて腕を組んだ。

「美也がもらってたお年玉、あんたうちの親に渡してたでしょ。それ全部貯めてたのよ、うちの親が」

「えっ……あの、あれは私がご迷惑をおかけしてる生活費にと――」

いうつもりで、美也はおばにお年玉を渡してきていた。

奏がひらひらと手を振る。

「いや、さすがに親戚からもらったあんた宛てにお金をちょろまかせるほどじゃなかったってことでしょ。訊いたら、美也が家を出ていくときに渡すつもりだって言ってたから、それ持って来たわ。デート服をあたしが出したら、あんたまたヘンな遠慮しそうだし」

「……あ、ありがとうございます……」

言い方は高飛車だが、奏なりの気遣いだと思うと嬉しかった。

そしておじとおばは、美也に関心がないながらもそういう考えを持っていたのか、と。

「あ~、あたしも溺愛してくれる彼氏ほし~」

いきなり奏がそんなことを言った。

「ちょ、何言ってるんですかっ」

「お? 自分のことだって自覚あるんだな? いーじゃん」

慌てる美也を見てにやにやする奏。

「え……と、いや、その……」

美也はしどろもどろだ。奏は得意気な顔をする。

「なんだい? 言ってみろ」

「その……奏さんは、榊さんが人間じゃないって知って……どう、思いましたか?」

おじから母のことを聞かされていたとは聞いたけど、人間じゃない、という存在をすんなり受け入れた奏は、美也には不思議だった。

自分は結構悩んだのに。

「うん? あの超絶イケメンと恋愛することに何か問題ある?」

「問題と言うか……怖い、とか、思いましたか……?」

「全然? バチクソイケメンってだけで優勝」

「ゆ、ゆうしょう……」

それはなんの大会なんだかわからなかったが、奏の判断基準はそこらしい。

「あんたは物心ついたころからあのイケメン見慣れてるせいもあるんだろうけど、あの人見た目良くて性格も悪くないじゃん? あんたのこと一番に考えてることは少しの会話からもわかったし、イケメンでも性格死んでる奴って多いんだよね。自分の見た目いいことわかってて使ってるって言うか……まあ、あんたは無自覚過ぎてイラっとすることもあるけど、あれは手放しちゃダメな存在だからね。男で失敗たくさんしてきたあたしが言うんだから間違いない」

「そ、そうなんですか……」