「じゃあこの神様みたいな美形は……」
「ざがぎざんです」
美也は涙声になったのを一度止めるために、ひくと唾を飲んで目元を拭いた。
「奏さんを、助けてくれた人です」
「え」
「本当です。私だけでは、助けられませんでした」
「………」
奏が少し上体を起こして、美也と榊を交互に見る。
すると、榊が口を開いた。
「愛村奏。俺が助けたのはお前じゃない。美也が助けたいと思ったから、それを手伝ったまでだ」
「………そう、ですか……」
奏が、ぽつりと言った。そして、美也に寄りかかる奏の体が、一気に重たくなった気がした。
「ごめん、なんか頭の中ぐちゃぐちゃで……」
奏が、自分の目のあたりに腕を横に置いて隠した。
(奏さんが謝るの、初めて聞いた……)
「少し、休んでください」
美也の膝を枕にするように横になっている奏の顔を覗き込みながら言った。
奏は口をへの字に曲げる。
「……あんた、あたしのこと嫌いじゃないの? なんで助けたのよ」
「嫌い……と言うか、複雑ではありました……。でも、奏さんが死ぬのは嫌だったので助けました」
美也がそう口にすると、奏は大きく瞬いた。そして、
「………はあ~~~~、あんた、バカなほどお人よしだとは思ってたけど、ここまでとはね……いや、うん……そうなのよね……」
奏はひとりごちるようにぶつぶつとつぶやいている。
そして最後に、何かに納得したように、うん、とうなずいた。
美也は眉根を寄せる。
「なんですかそれ。奏さんこそ、私のこと嫌いでしょう?」
「嫌いって言うか……複雑だったのよ、あたしも。ああいう親の手前もあるし……」
あんたをどう受け入れたらいいのか。奏は腕で目元を隠し、唇だけ動かしてそう伝えてきた。
その言葉と気持ちは、美也が初めて耳にするものだった。
奏の彼氏だった人たちとのことといい、美也の知らない場所で、奏も苦しんでいたのかもしれない。
「ときに愛村奏。俺は将来美也に結婚を申し込む立場なのだが」
榊が爆弾発言かました。