美也が両手を合わせて懇願すると、開斗はそっぽを向いたままの顔で、目だけでちらりと美也を見てきた。
「……巫女さまが、その人を探したいんですか?」
その開斗の目ははじとっとしている。
美也は力強くうなずいた。
「そうです。決めたんです私。強くだけじゃなくて、優しくもなるって。私の気持ちが奏さんに届くかは、意味があるかはわからないけど――放ってはおけないんです」
奏に対して優しくしようとか、優しさを見せようと思っているわけではない。
ただ、心配なことをしている人を、見捨てない自分になりたいと思っている。
開斗は不承不承とうなずいた。
「………わかりました。大事な巫女さまのお願いを無視するわけにはいきません。みんなにも手伝ってもらって探します。ぼくは巫女さまと一緒に探しますから、何かわかったらぼくに伝えてもらいます」
「ありがとうございます! 開斗くん!」
「え、えへへ~じゃないっ。お礼は探してる人が見つかったら言ってください。僕はまだ使える術もなくて、地べた捜査になってしまいますが……」
「協力してくれるだけで大助かりですっ。行きましょう!」
――このとき美也は頭の中が興奮状態だったため、開斗は美也に頼られて舞い上がっていたため、すぐに榊を頼るという選択肢がすっぽ抜けていた。
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雨はだんだん強くなっている。
傘もささずに走り回る美也のことを不思議そうな目で見る通行人がいたが、美也はそんなことに気づく余裕もなかった。
「はっ! 巫女さま! 探してる人、川岸にいるみたいですっ」
「か、川岸っ?」
急にあがった開斗の声に、美也は意表をつかれて答えた。
「はい。見つけた子が呼んでくれてるので、ぼくについてきてくださいっ」
そう言って、開斗は美也の先を走り出した。
開斗が速度をあげて先導してくれるので、美也は呼吸が切れそうな勢いで走った。