その声に、思考に沈んでいた美也の意識がはっとする。

小さなあやかしたちがわんさかいる状況にびっくりしていて気づかなかったが、神社の社(やしろ)は綺麗な状態で建っていて、その欄干につかまって手を大きく振っている開斗がいた。開斗は人間の子供の姿だった。

「開斗くん……」

呼ぶと、開斗ははだしで階段を下りて駆けてきた。

美也の目の前まで来て、にっこり笑う。

「巫女さま、おはようございます! 来てくださって嬉しいですっ」

「おはようございます、開斗くん。あの、この子たちは……?」

小さなあやかしがこんなにたくさんいるのは、視えるようになってから初めてのことだ。

開斗が、自分の功績のように胸を張る。

「榊さまが保護したあやかしたちです。龍神の眷属ではないのですが、力が弱まって消えそうだったところを榊さまが拾ってきて手元に置いて育てているのです。小さなあやかしは、簡単なことで消えてしまうので」

小さなあやかし。

確かに、子猫や子犬と同じくらい大きさの子ばかりだ。

「そうなんですね……たくさんいるんですね」

美也がしゃがむと、丸い子がころころと転がってきた。

そして恐る恐るといった感じで美也の指先に体を触れさせた。

触れた感覚は美也の手にも残った。

小さなあやかしが心を開いてくれたようなその行動に感激していると、開斗がやれやれとため息をついた。

「榊さま、ほいほい拾ってきちゃうのです。小さなあやかしと言えどこれだけ多くの配下を抱えてもぴんぴんしているのは、榊さまの格と神気が強いことの証でもあるのですが」

え、と美也はしゃがんだ状態で、立っている開斗の顔を見るように顔をあげた。

「配下……がいると、弱ったりするんですか?」

その質問の説明は開斗には少し難しかったらしく、両手の人差し指で左右のこめかみをもんだ。

「ええと……自分の眷属なら同じ神気を持っているので問題はないのですが、小さなあやかしは龍神の神気を持っていないので、実体を持ち続けるために榊さまが自分の神気を霊力に変えて与え続けなければならないのです。人間も、捨てられてる動物を拾ったら、拾いっぱなしで生きていられないから、ご飯やお水をあげますよね。それと似た感じです。でも霊力はお金で買えるものではなくて、自分の中にあるものしかありません。榊さまの場合は地上の龍神の最高神なので、ほぼ無尽蔵にあるのです。本来なら榊さまも大きな神社とかの神様なんですけど、へそ曲がりなんで誰もいない神社見つけて勝手に住んでるのです」

「榊さん、すごいんですねえ……」

ほうっと、感心のため息が出る。

だがへそ曲がりなのか。