美也が榊に意味を聞こうとしたら、開斗がちょんとついた両手をせいいっぱい挙げて言ってきた。

基本的に開斗は空中を浮遊しているので、移動のために手足は使わないようだ。

「お前人の姿ろくに取れないだろうが」

榊がため息とともに言えば、開斗はぷーっと口を膨らませる。

「ぼくが大きくなって天界に帰っちゃったら榊さまが淋しいから、ぼくが大きくならない方がいいんでしょう」

「んなわけあるか」

榊はすげなく返す。

美也は、開斗に問いかけた。

「天界って……開斗くん、帰るんですか?」

「ぼくの生まれは天界なのです。神様として地上や人を知るために、榊さまのところへ修行に来ているのです」

「神さまとして……?」

「はい。人の心にある願いを叶える力を持っているのが天界の神様です。でも、ほかの人に害悪をなすような悪いことを叶えたいと願う人もいます。そういう人の『悪い願い事』を叶えてしまわないように、見極める力が必用なんです。ぼくはその修行に、榊さまのところに来ているんです」

美也がまた、ほうほう、と聞いていると、榊が補足説明した。

「大雑把にくくると、地上の龍神は、地上の霊気や神気、妖気に乱れがないようにあやかし側から守るのが役目だ。一方で天界の龍神は、人の願いを聞き、叶える力がある。一応俺は地上の龍神を統べる役目もあるから、開斗みたいな理由で預かる小龍がいるんだ」

榊の追加の説明を受けて、えっへんと胸を張る開斗。

「そうなんですね。開斗くん、修行を頑張っているんですね」

「え、えへへ。はいっ。ぼく、頑張ってます!」

「そうでもないぞ。俺の言うことろくに聞かないし、勝手に御門の陰陽師頼るし、やりたい放題だ。割とクソガキ」

「榊さま、自分がくそじじだからってぼくに八つ当たりしないでくださいっ」

「じゃあくそじじいらしくしごいてやるよ」

「きゃーっ!」

しごく発言をされて、開斗は悲鳴を上げて美也に隠れてぷるぷる震えだした。

榊はため息をつく。

「お前が大きくなるならない以前に、まだ修行は終えられないな。お前の縁者にはまだまだ青すぎると伝えておこう」

「きゃーっ!」

榊に一刀両断され、開斗は目を手で覆った。