「あ、改めまして、巫女さま。ぼくは榊の使い龍、名前を開斗(かいと)と申します。ぼくは龍神直属なので、神気はまだまだ少ないのですが、人型にもなれます」

「そうなんですね。清水美也といいます。よろしくお願いします。開斗くん」

「み、巫女さまがぼくの名前呼んでくれた……! うわーん! ぼくもう死んでもいい~!」

わんわん泣き出した開斗とその言葉にびっくりした美也は、慌てて開斗の両肩を掴んだ。

「開斗くん!? そんなこと言っちゃだめですよ!?」

「美也、こいつのことは気にしなくていい。美也に何かあるとすぐに死にかけるヤツなんだ……」

「どういうことですか!?」

すぐ死にかけるって、初めて聞いた言葉だ。

榊は深くため息をつく。

「美也のことを敬愛しすぎていると言うか、美也に対してバカなんだよ、こいつ」

「巫女さまの前でぼくのことけなさないでくださいくそじじ!」

「お前に言われると腹立つ」

開斗が榊の下につく龍だということはわかったが、二人の関係性はいまいちわからない。

榊さまと呼びつつもくそじじと罵る開斗。

榊は榊で、その態度を改めさせようとはしていないように見える。

美也は、白桜に向かって頭を下げた。

「月御門さん。今日は呼んでくださってありがとうございました。おかげで……榊さんのことを知ることができました」

その言葉を聞いた白桜、確認するように訊いてきた。

「……嫌な気持ちにはなっていないか?」

「はい。月御門さんが呼んでくれなければ――開斗くんが百合緋さんを頼っていなければ、私、ひとりで考え込んで袋小路になっていました。だから……ありがとうございます」

「そうか。悔いのないようでよかった。あとは……榊と二人で話した方がいいかな?」

すっと、白桜が榊に目をやる。

美也も、強い気持ちでうなずいた。

(大丈夫だ。今、不安はないね?)

自分に問いかける。それに対して、心が温かくなるという、晴れ晴れしい答えがあった。

「榊さん、まだ疑問があるので、答えてもらえますか?」

美也が榊に向かうと、榊は神妙な顔で顎を引いた。

「ああ。美也の納得のいくまで付き合おう」