「す、すみませっ……ふふっ!」
なんとか謝ろうとしても、美也はまた笑ってしまう。
榊はどうしていいのか手をうろうろさせていて、白桜の腕に巻き付いている使い龍もオロオロしだした。
白桜と天音は泰然自若と構えているが、百合緋は呆気にとられてしまっていた。
美也は美也で、これを腹の底から笑った、というのだと感じていた。
両親を亡くしてから、友達の前で笑うことは出来た。
でもそれは作り笑いに近くて、こんな、制御できないような大爆笑をしたことはなかった。
少し経って自然と美也の大爆笑が収まると、目元に浮かんだ涙をぬぐいながら美也が立ち上がった。
「すみませんでした……」
恥ずかしくなりながら頭を下げると、白桜が首を横に振った。
「笑えるのはいいことだ。何がおかしかったんだ?」
問われて、美也は迷った。
「その……榊さんと、使い龍さんのやり取りが面白くて……」
言葉を濁すと、使い龍がすっと白桜の腕を離れて、美也の目の前にやってきた。
「ぼく、巫女さまがもっと笑ってくれるように、榊さまと面白いやり取りします!」
そう言うなり、ぐるんと体を前転させた。
「えっ!?」
そして次の瞬間美也の目の前に立っていたのは……
「巫女さま、だいすきですっ」
美也に抱き着いてきた、六歳か七歳くらいの男の子だった。
「え? えっ?」
いきなりの転身に美也が戸惑っていると、榊が子供の首根っこを引っつかんで引きはがした。
「お前の巫女じゃねえんだよ。気安く触んな」
「榊さまの巫女さまだもん! ぼくが可愛がってもらって何も問題ないです!」
(この言い合い……)
「使い龍、さん……? 人間にもなれるの?」
美也に言われて、ぱあっと顔を輝かせる男の子。
「はいっ! ぼくですっ」
「挨拶」
榊に低い声で言われて、男の子ははっとして背筋を正した。