「あの、月御門さん、その可愛い龍さんが、使い龍さん、ですか……?」
「はうううう!? ぼ、ぼく、巫女さまに認識されている……!?」
面倒くさいオタクのようなことを言う水色の小さな龍。
白桜も驚いた顔をした。
「視えているのか? どんな姿だ?」
「水色で……青灰色の目で……月御門さんの腕に巻き付いてます……」
美也の返事を聞いて、答えるより先に白桜は榊を見た。
使い龍は感動に打ち震えて、更に大泣きしている。
涙が滝のようになっている。
「美也? 本当に……霊力が戻ったのか……?」
驚いているのは榊も同じだった。
「榊がやったんじゃないのか?」
「俺から解除はしていない」
「じゃあ……」
白桜と榊が考えるように黙り込んでしまった。
「あ、あのっ、天音さんも……龍神様なんですか? 駅で逢った時と見た目が全然違うから……でも、私そのときから天音さんは見えてました」
これも何かの証明になるかと思って、美也は口にした。
天音は、自分の胸元に手を当てる。
「わたくしはこれといった特性のないあやかしに御座います。逢ったときから清水様に見えていたのは、霊力のない方にも見えるように妖気を強めていたからです。――申し遅れましたが、わたくしは月御門が当主、白桜様の一の式、天音と申します」
天音が、あやかしとして名乗りをあげた。
天音は淑やかを体現したような見た目をしている。
特性のないあやかしと言ったけど、もしかしたら人に幸せを届けるような、座敷童の大人版みたいな存在かもしれない。
「ちなみに美也さん、天音は昔、『鬼神(きしん)の天女』って呼ばれてた、この国でも指折りのめちゃくちゃ強いあやかしなんですよ」
「百合緋様……お戯れを」
「………」
恥ずかしそうに手を口元に寄せる天音。
え、これでめちゃくちゃ強いって……戦闘タイプなの?
「美也、本当だ。天音はかつて、『鬼神』と呼ばれていた。鬼神は神ではなく、鬼の中ですべての者に強さを認められた者にしか与えられない呼び名だ。天音自身は鬼ではないが、あやかしの最高位の鬼、そう呼ぶに遜色ないと判断されたらしい」
榊が、否定するどころか肯定してきた。
見た目によらないのは人間だけではないのか……。
「ええと……榊さんは龍神様で神様で、天音さんは鬼神だけど神様じゃない……?」