そう感想してしまうくらい、この場は美形ぞろいだった。
「百合姫、ありがとう。案内お疲れ様」
青年が言うと、百合緋が青年に駆け寄った。
「気にしないで。わたしがはじまりだし。今日はお庭で話した方が良さそうね?」
付き合っているのかな? と疑ってしまうほどお似合いの二人。
青年を見上げる百合緋の眼差しも、百合緋を見る青年の眼差しも穏やかで優しく、それだけで憧れてしまうくらいだ。
青年が、美也を見てきた。
切れ長の瞳に見つめられて、美也は背筋を正した。
人好きのする容姿と思ったけど、一瞬、天音よりも迫力を感じた。
放つオーラというか、存在が違う、そんな感じがした。
「そうだな。はじめまして、美也嬢。俺は月御門白桜(つきみかど はくおう)。一応、当主をしている」
青年――月御門白桜は、そう自己紹介をした。
「は、はじめましてっ。清水美也です。あの、唐突なんですが、どうして私がここに呼ばれたのですか……?」
そう美也が問うと、白桜は軽くうなずいた。
「うん、理由はちゃんとあるよ。実はこの……ああ、まだ美也嬢には視えていないかな。ここに榊の使いがいてね。この子が百合姫を頼ってきたんだ」
そう言って、自分に左腕を軽く横に差し出す白桜。
美也は何度も瞬いてそこを見るが、白桜以外には何も見えない。
「なにも見えない……です」
素直にそう口にすると、白桜は、そうかと答えた。
「榊とのことは、そこから問題だったのかもな。美也嬢は―――」
「御門おぉおおおおおお!」
ドゴオオッ! と大きな音を立てて、つい先ほど美也たちが入ってきた門扉が破壊された。
突然のことに、ただ驚きに目を見開く美也。
百合緋は小さく悲鳴をあげたが、大して白桜と天音は想定済みとばかりに動じない。
門扉を破ると同時に舞った土埃が収まった頃見えた姿は、なぜか榊のものだった。
美也も見たことのない憤怒の形相をしている。
「榊。人の家を壊すな。あとで直してもらうぞ」
榊、と白桜は呼び捨てにして、そして門扉の破壊も大した問題ではないような言い方だ。
榊は烈火のごとく怒っていた。