「あー、ちょっと休憩!」

 海岸へ到着するやいなや、砂浜にごろんと背をつけて寝そべったユーイチの胸板が、膨らんだり萎んだりを繰り返して、必死に酸素を吸入している。

 海までは、自転車だと二十分ほど。その間ずっとわたしを後ろに乗せて漕いでいたのだから、彼がくたくたになるのも無理はない。

「お疲れ、ユーイチ」
「おう。あちい……」
「だよね。なにか飲み物、買ってこようか?」
「いや、いい。潮風にあたってりゃあ、すぐ涼しくなるっしょ」

 そう言って、瞳をしまうユーイチ。そんな彼の隣でわたしも腰を下ろし、寄せては返す波を見つめた。

 遠くの方にしかあまり人が見受けられないのは、ユーイチがあえて、遊泳区域の外を選択したからだろう。

 夏休みにもかかわらず、人気(ひとけ)が少ない目の前の海では、まるで太陽をトンカチで砕いて落としたカケラのような粒々が、水面(みなも)一帯をきらきらと光り輝かせていた。